オレイン酸とは?
オレイン酸はn-9系列の不飽和脂肪酸です。n-3系列のα-リノレン酸、EPA、DHA、n-6系列のリノール酸、γ-リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸とは異なり、一価不飽和脂肪酸に分類されます。
オリーブ油のほか、バイオレイックタイプのひまわり油とサフラワー(紅花)油、菜種(キヤノーラ)油、落花生油、米ぬか油、パーム油(パームやしの果肉からとった油) などの植物油に多く含まれています。
牛脂(ヘット)、豚脂(ラード)などもオレイン酸を多く含みますが、動物脂には飽和脂肪酸も多いので、とりすぎるとコレステロールや中性脂肪をふやすことになります。
オレイン酸の効果に期待するなら、植物油からとるのがよいでしょう。油脂以外ではナッツ類に、オレイン酸が豊富に含まれています。一価不飽和脂肪酸には、ほかの脂肪酸にくらべて酸化しにくいという特徴もあります。
オレイン酸はほかの油より長期間の保存にも耐えます。体内で発がんの恐れのある過酸化脂質をつくりにくく、リノール酸やα-リノレン酸とは違って加熱による酸化の心配もないので、加熱調理にも安心して使えます。
「地中海式ダイエット」で注目された、オリーブ油とオレイン酸
1960年代に世界各国の食生活と疾病に関する調査が行なわれた際に、南イタリアを中心とする地中海沿岸地方では、他のヨーロッパの国々にくらべて心臓疾患による死亡率が低いことがわかりました。
食生活をくらべてみると、この地域ではパスタなどの穀類の摂取量が多く、魚介、野菜、豆、果物などを豊富にとっています。油脂ではオリーブ油の使用が目立ちました。
まわりの国々にくらべて肉やバターの摂取が少なく、むしろ日本の食生活に近い摂取バランスであることがわかりました。
豚肉や動物性脂肪を多くとっている北イタリアでは、心臓病、大腸がんが多いことから、民族的な特徴ではないことは明らかです。
オレイン酸の名は、オリーブ油から単離された脂肪酸であることから命名されたもので、オリーブ油はオレイン酸を70%以上含む、代表的なオレイン酸含有食品です。また、植物油のなかで最も消化・吸収がよく、脂溶性のビタミンであるビタミンA、ビタミンE、ビタミンKを含みます。
オリーブの果肉に15~20%も含まれている油分を絞ったもので、特有の風味は、パスタ料理やサラダのドレッシング、南欧風の野菜料理、魚料理などに欠かせません。そのほかヨーロッパでは、髪の毛や皮膚の美容、健康維持のために塗って使うことも、広く行なわれてきました。
ほかの脂肪酸とのバランスよく摂取する 動物性脂肪に多く含まれる飽和脂肪酸、さらにはn-6系列の多価不飽和脂肪酸のとりすぎから、動脈硬化、心臓疾患、アレルギーなどの生活習慣病がひきおこされることがわかり、オレイン酸をはじめとする単価不飽和脂肪酸が注目されるようになりました。
それぞれの脂肪酸をバランスよく摂取することが、健康を保つうえで重要だとされています。厚生省が1999年に公表した「第六次改定日本人の栄養所要量」では、脂肪酸の望ましい摂取比率は「3(飽和脂肪酸):4(一価不飽和脂肪酸):3(多価不飽和脂肪酸)」で、脂肪酸全体の約4割を一価不飽和脂肪酸が占めるのが望ましいとされています。
2000年公表の「五訂日本食品標準成分表」には、各食品について3種の脂肪酸の含有量が表示されています。
n16系列のリノール酸を豊富に含むサフラワー(紅花)油やひまわり油なども、原料の品種改良によってオレイン酸の多いタイプ(バイオレイック)がつくられ、出回っています。
